令和3年4月21日、民法等の一部を改正する法律及び相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律が成立した。
所有者不明土地問題が国土の公共的活用等に関連する喫緊の課題となっているところ、これらの法律案の成立によって、その予防及び解消に関する民事基本法制が概ね整備されたことになる。
今般の法律改正によって、所有権の登記名義人につき相続が発生した場合、原則として、相続人には、3年以内に相続の登記を申請しなければならないという義務が課せられる。期限内に相続の登記を申請するには、出生から死亡までの戸籍事項証明書等の取得を始めとした様々な前提事務処理を行わなければならず、国民にとって、負担になることが想定される。
全国の司法書士会で組織する日本司法書士会連合会では、国民にとって過度な負担とならないよう、より簡易な手続で相続の登記の申請義務を履行したとみなされる等の制度を設けることを提言してきたところである。今般の改正では、この提言に沿う形で相続人申告登記が創設されており、国民の負担を最小限にするものと考えている。
もっとも、所有者不明土地の発生防止の観点からすれば、できる限り遺産分割協議を経た上で、確定的に権利を取得した相続人の名義とする登記の申請を行うべきである。相続人申告登記は、当該確定的な権利の登記申請につなげるための過渡的な手続、相続発生の事実及び相続人の一部を公示する役割として位置付けられよう。
相続登記の申請の義務化をはじめ、相続によって承継した土地所有権の国庫帰属制度や、所有者不明土地管理人に代表される各種の財産管理人制度等、国民生活に与える影響が大きい事項について、当会は市民に対してきめ細やかにサポートを実施していく予定である。その対策の一つとして、今般の法改正に先立って、当会では本年2月1日から「相続登記相談センター(058-246-1568)」を立上げ、また日本司法書士会連合会では本年3月1日から相続相談に応じる全国統一の受付フリーダイヤル(0120-13-7832<いさんのなやみに>)を設置し、相続登記及び登記全般に関する相談について、市民が司法書士会及び司法書士に気軽に相談できる窓口としてぜひご活用いただきたいと考えている。
司法書士は、「登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家」として、多くの相続事件に関与している。今後も、身近なくらしの中の法律家として、改正法にいち早く対応し、国民の権利擁護に資する所存である。
岐阜県司法書士会
会長 今井 万寿之